第54回 福岡県公民館大会 -報告-
【主催者挨拶をする中嶋裕史会長】
平成21年8月5日(水)、北原白秋のふるさと、水郷のまち柳川市の柳川市民会館において、県内各地から関係者約1,000名の参加者を得て、第54回福岡県公民館大会を開催しました。
近年、少子・高齢化、都市化、情報化等が急速に進む中、家庭や地域の教育力の低下、地縁的なつながりの希薄化等が指摘されています。
そのような中、本県では「志をもって意欲的に学び、自律心と思いやりの心をもつ、たくましい子ども」の育成の向け、子どもの実体験の促進や家庭・地域の教育力の向上等を目指す教育力向上福岡県民運動が展開されており、今こそ公民館は、地域における社会教育の拠点として、この運動推進の一翼を担うことが期待されるところです。
そこで、今回は「教育力向上福岡県民運動の推進と公民館」を大会テーマとし、記念講演、シンポジウム等を行いました。
午前中の大会式典の表彰式では、長年にわたり公民館活動に尽力し功績のあった41名の公民館役職員と5館の優良公民館が表彰されました。
【記念講演をする讃岐幸治氏】
記念講演では、放送大学愛媛学習センター所長の讃岐幸治氏から、「体験活動を通した青少年の自立とこれからの社会教育」と題して、これから子どもたちの社会的な自立と精神的な自立、心理的な自立をどうつくるか。また、社会教育の場合は、いかに子ども自身がチャレンジしていく世界をつくるか。そして、人と人との関係をどう保っていくか。その訓練の場を今の内に作っておく必要性があること等について、参加者にわかりやすくお話をしていただきました。
午後からは、福岡県教育庁教育企画部企画調整課の瓜生郁義企画監から、本大会のテーマと関連する「教育力向上福岡県民運動」の展開と公民館について説明がありました。
また、シンポジウムでは、コーディネーターとして林田スマ氏(大野城まどかぴあ館長)、シンポジストとして松原克彦氏(飯塚市穂波公民館長)、古賀靖紀氏(柳川市立蒲池中学校教頭)、栗焼憲児氏(豊前市教育委員会社会教育係長)、西村澄子氏(筑紫区小学校PTA連合会長)に登壇いただきました。
【林田スマコーディネーター】
【シンポジストの方々】
<シンポジウムの概略>
(飯塚市穂波町中央公民館長 松原克彦氏)
- 学校といかに連携をしていくかが課題である。「子どもマナビ塾」は、平成18年度、月曜から土曜まで毎日実施(年間275日間)、指導に当たったボランティアは約1万人。子どもたちの出席率80%、5つの小学校、全児童の3割が参加している。
地域子ども会が衰退し崩壊している。この事業は、校区単位の子ども会だと思っているが、児童クラブ等との問題がある。教育と福祉との連携が課題となっている。合併し平成19年度、全市に広めた。12地区公民館があり中央公民館が拠点となっている。「熟年者マナビ塾」は、学校から教室を1つ準備してもらった。時間帯は子ども達と同じ1時間目から3時間目までで、週1回開催する。22小学校で実施できた。学校教育との連携が欠かせなかった。学校は、熟年者が来ることによって、先生の姿勢が変わった。熟年者は、子どもからエネルギーをもらう。子どもは熟年者と触れ合うことによって様々な経験ができた。両事業は、かけ声だけだった「学社連携・融合」が真の実践となった。
- 庄内の通学合宿のしくみは、月曜日から始まって日曜日に解散する。大体15名で、すべて自分たちでやる。薪でごはんを炊き、薪で風呂を沸かす。NPOが中心となって土日の体験活動をしている。穂波公民館では、3泊4日をした。風呂が問題だったが、もらい湯をした。
- 今の子どもの親が子どもに何も教えていない。意図的に新たなプログラムを組んでいる。校区単位でまずやってみる。そこからスタートする。仕掛け人は公民館、PTA、学校と連携する等、行動に移すことが重要である。
(柳川市立蒲池中学校教頭 古賀靖紀氏)
- 最近の新しい教育の課題としては、学校が非常に忙しいこと、子ども達とゆっくり話が出来る時間がないことなどがある。その中で、PTA活動が本当に機能を果たすためには何をすればいいのか、スクールサポーターとして学校を支えると同時に、現役PTAを支えるということで立ち上がったのがスクールサポーターズである。スクールサポーターズの特技を生かし、歴代PTAと現役PTAと地域をつないで様々な行事を実施している。これは、あくまでも学校を支援するという考え方で、本来、学校の先生がすべきものすべきでないものの引き算をしなければならない。
- 地域でお願いしたいこと等、意思の疎通ができづらいと何も前進しないと思う。
- 蒲池地区は1小、1中で、9カ年一貫校みたいなもの。そこに敷居があると進むものが進まない。サポーターが中心となって垣根を低くしていくことに取り組んでいる。
大学生から、スクールサポーターに参加したいとの要望があった。次の世代を作っていく役割がある。各世代の子どもたちがつながっていくプログラムを公民館と一緒に考えていきたい。
(豊前市教育委員会社会教育係長 栗焼憲児氏)
- 子ども会は我々の所管なので子ども会のいろんな事に関わるが、構成員は同じでPTAには全く関わらないというのは、これから先PTAと社会教育を行う行政との関わりは考え直していかなければいけない。
各公民館が行っていることは各団体による公民館の活用で、今一番問題になっているのは公民館の活性化である。豊前市では公民館活動を活性化したいという取り組みの中で、アンビシャス広場や通学合宿などへ関わっています。公民館それぞれの関わり方は、主体的、客観的と様々ですが、それを今後行政が手伝いながらさらに活性化したい。
- 成果としては、地域の人材の確保ができた。公民館でいろんな事をやることで、公民館の活動に理解を示し協力をしてくれた。問題としては、財政的な支援である。通学合宿については、市単独の補助金をつけることができた。
- 豊前市では、11の公民館中4館(4小学校区)が通学合宿の拠点施設となっている。対象年齢は5年生が多い。人数は、20~30名程度が適当な規模ではないか。予算は平均10万円前後が多い。期間の理想は6泊7日が良いと聞いている。期間が短いと失敗体験が失敗体験で終わる。
- それぞれの公民館の特性を生かした活動を推進していきたい。そのためには、それぞれの地域で何が出来るのか、それぞれの公民館の特性は何かということを考えていく。豊前市では、公民館ごとの特性を分析し、生涯学習推進計画策定を考えている。行政が公民館活動にどういうマネージメントが出来るのか考えながら進めていきたい。
(筑紫区小学校PTA連合会長 西村澄子氏)
- 春日市では、中学校は3校、小学校は12校でコミュニティスクール、学校運営協議会を組織している。地域が学校の行事や運営等に関わり、委員には学識経験者、地域の代表、自治会の公民館長や自治会長、保護者、学校、行政等からなる。また、市P連の試みとしての「伝えよう!愛」あいさつキャンペーンでは、朝の登校時に校門にたってPTAと先生方、地域の方が登校するこども達にあいさつと一緒にハイタッチをする取組をし、とてもエネルギーをもらっている。もう一つ、福岡県PTA連合会が新家庭教育宣言という早寝早起き朝ごはんに取り組んでいる。
課題だと思っているのは、PTAと子ども会、育成会との関わり。メンバーは全く同じだと思うが、子ども会離れ、育成会離れがすすんで育成会は今後どうなっていくのだろうという危機感を感じている。
- 先生方が困っている現状を出すことがまず第一ではないか。それによって、PTAや地域との連携が始まるのではないか。
- 是非、自分の地域でも通学合宿をやってみたい。通学合宿をしている自治会があることに感動した。習い事や塾等により子ども会離れがある中、通学合宿をしても子どもが集まらないのではないか。
本来自分たちが子どもの頃に当たり前のようにしていたことが体験できない。あまりのも与えすぎることが問題ではないか。
<コーディネーターのまとめ>
(大野城まどかぴあ館長 林田スマ氏)
- 子どもたちだって認められたい、大人たちも認められたい。お互いに認め合って地域を良くしていく。地域は家族だと言われるが、その地域の子どもたち、その真ん中にある公民館は大きな地域という家族のリビングルームではないか。誰かに何かがあったときに集まっていろんなことを話して、問題を共有し情報を共有して、また何かをやっていこうとすることが始まる。公民館という空間は、地域の大事な場所。そこに館長さんがいらっしゃる、主事さんがいらっしゃる、そしていろんな方が出入りをする。この公民館から地域の良い風が、アンビシャスは地域を元気に、教育力向上福岡県民運動は学校の先生方が伸び伸びとやってもらう、こういう風もある。みんなで子どもたちに向けて良い風を送り合う、その拠点として公民館が頑張ることで、子ども達がすくすくと幸せに伸びる社会をつくっていけたらと考える。
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