X 男女共同参画事業 |
1.はじめに−地域の動き− 博多区大浜地区は博多の伝統的な文化が息づく町であり、博多の古き良き下町に風情 が残る土地柄であるが、少子高齢化・児童数激減のなか、大浜・奈良屋・冷泉・御供所 の4小学校は平成10年に「博多小学校」へ統合された。地域では市の方針により「コ ミュニティの自律経営」をめざして、各自治会と各種団体等を構成団体とする自治協議 会が結成され、横の連携を取りながら活動している。 |
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2.なぜ男女共同参画?日頃の公民館の活動や会話から 公民館の主催事業としてこれまでは「女性セミナー」として、女性が関心のある身近 な問題や女性の地位向上をめざした内容を学習してきたが、女性協議会が男女共同参画 協議会へと名称が変わるなかで、公民館としても男女共同参画の視点で取り組んだこと がなく課題となっていた。また男女共同参画協議会の役員からも「『博多祇園山笠』や 『博多どんたく』などの祭の中での男と女の役割の違いで女性から不満はなかったのか、 固定された役割で納得しているのか」「日々の暮らしの中にあるさまざまな疑問から男 女共同参画の問題を考えてみたい」「そもそも男女共同参画とはどういうことなのか」、 など意見が出されていた。 |
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3.『ジェンダーってなあに?』−企画とプログラム作成の視点− 日頃情報交換している公民館主事さんから「ジェンダー劇団」という演劇を通して男女問題を考えるワークショップ形式の講演があると聞き、 館長と主事で早良区有住公民館の「ジェンダー劇団」の講演を見学に行った。劇団員の方々とお会いしたら、 寸劇を通して男女共同参画の問題を多くの方に伝えたいと活動を始められたとのこと。皆さんの熱い思いを聞きながら是非大浜でもと思った。 早速、男女共同参画協議会の役員と公民館職員とで企画会議を開き、主事が「今までは『受けたまわり型』の講座ばかりしてきたけれど、 参加者が活発に意見を出し合い、自らの体験をもとに考えられるこのワークショップを取り入れるのがいいのではないか」、と提案した。 これまで女性の活動団体は「大浜婦人会」から「大浜女性協議会」へと名称を変え、時代とともに活動してきたが、現在は「大浜男女共同参画協議会」となり、 会長や役員から公民館に「なんで名前が変わったとやろうか?」「男女共同で参画するってどういうことやろうか?」 「いくつかの研修で専門の先生からお話を聞きある程度理解したつもりだが、地域の皆さんにどう伝えたらいいのか、 どういう研修がいいのか悩んでいる」と相談もあった。私自身も研修会などで学んできたが、 さて公民館で事業として取り組むには・・・と考えていたのでいい機会だ、一緒に考えてみようと思った。 ジェンダーとは、生まれながらに持っている性差でなく、社会的、制度的につくられた性差のこと。「ジェンダー劇団・お茶するウ?」と銘打って 「寸劇」や「コント」で楽しく学ぼうというものである。「5分位の寸劇をみて意見交換をするとよ。ワークショップていうと」 「グループごとに意見をまとめて発表すると」「なんか難しいごたぁね」 「人前で言うのはいややね」「発表やらできんよ」と消極的な意見が出る一方「面白そうやん」「なんとかなるくさ」といろんな意見が出るなかで、やってみようということになった。 |
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4.プログラム・実際の内容と工夫 「地域コミュニティ形成において、男女の壁を取り払い、共に家庭生活や地域活動に参画できるよう意識改革をめざす」をねらいに、 男性へも呼びかけた平成16年度のプログラムは以下の通りである。 |
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今回は5回のプログラムの中で1回目と最終回に「ジェンダー劇団・お茶するゥ〜」に登場してもらうことにした。
2回目は「男も料理を」、3回目は「男も花を飾ろう」お正月の花に挑戦してみよう、4回目は「男も女も音楽を」と題し、ワイン片手に音楽を(新春コンサート)
楽しみ語らうものにした。男女共同だから男性の参加をと、男女共同参画協議会の役員にはご夫婦での参加をお願する。又、地域の役員にも案内するなど工夫した。 第1回は参加者が24人(男4人)。予想はしていたがやはり男性は少ない。グルー プ分けをした後、「ジェンダー劇団・お茶するゥ〜」の自己紹介があり、参加者全員が今日だけの名前を、 例えばアリスとかサッチャーとかで 呼び合うことにし、参加者からなぜそ の名前にしたか発表してもらった。 一人ひとりが名前を言うと、笑いがあ ふれこれをきっかけに、打ち解けた 雰囲気ができた。冷たい雰囲気からなごやかな雰囲気を作っていくアイスブレイキングの手法が取り入れられ、 緊張していたムードがやわらいだ。このやり方がワークショップでいうアイスブレイキングなんだと私も勉強になった。 寸劇を3本[@子どもの結婚(結婚しない人が多い、同姓を好きになること) Aスーパーでのできごと(女の店長やけんつまらん) B体格のいい女性と細い男性がいる会社の中で]のテーマは、身近にどこにでもおこるものだった。ひとつコントが終わるとグループごとに感想や意見を交換し、 模造紙にまとめた。ファシリテーターの手際の良い進行で活発な議論となった。3本のコントについて意見交換し、まとめ、発表した。 感想がつぎつぎ出るだろうか?きちんとまとめ発表できるだろうか、少し心配していたが、皆さんはしっかりと発言していたのでまったくの杞憂に終わった。 ワークショップを取り入れて良かったと思った。 ワークショップの良さをあらためて実感した。講座が終了したあと帰られるときに参加者から「楽しかったね」 「いろいろ考えさせられたね」などの声を聞き、ほっとした。 最終回は、参加者21名で男4名、第1回と同じ顔ぶれであった。「〜女は損?男は損?〜」のテーマで『ディペート』を行った。参加者をふたつに分け、 男の立場、女の立場になりきってもらうのだが、果たしてどうなるのかと心配もした。最初にコントを演じてもらい、討論に入った。最終的には、だから、 「男は損だ」「女は損だ」として「男は、妻子を養う、という義務がある。責任がある。これは損だ」 「女は、仕事もしないといけない。育児もしないといけない。これは損だ」になったが、さまざまな意見が飛び交う激論となった。劇団のリーダーと公民館長と主事が審査員をつとめ、 審査した結果、男チーム=75点、女チーム=81点で、女が損という結果になり、男女共同といっても現実はまだまだ男性優位社会であることを確認することができた。 |
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5.成果と今後の課題、参加型の事業をさらに取り入れたい 今回投げ掛けた、『ジェンダーってなあに〜』は男女共同参画をめぐる問題の基本のところに触れることができたのではないかと思う。 これまでの学習はどちらかというと講師から一方的に講義を聞くという「受けたまわり的な学習」が多かったように思う。 今回参加者が身をもって感じながら学ぶ、ワークショップの手法を取り入れたが、開講前の不安は軽く吹き飛び、 参加者が生き生きと受講しての感想を述べてくれた。そこにはあきらめていたことへの反省や、視点を変えて物事を見るということで視野が広がること、 男と女でも、地域の中でもさまざまな意見があるということへの気づき、男女共同の視点が日常の生活態度の中で問われていること、 そして、参加して楽しかったことなど、である。男性の参加を呼びかけたが少なかったことは次の課題としたい。 公民館としてもこれからは、男女共同参画の講座に限らずいろいろな講座で参加型の学習会を取り入れていきたい。 参加者が意見を出し合い、お互いが違いや経験の幅に学び、その中で共通項を見出し、共同の力で生活や地域の問題の解決の方向を探り出していくようなそんな講座を実施していこうと思う。 とりわけ男性の参加の課題は、公民館運営懇話会委員から、18年度の取組みに「団塊の世代」をテーマにした講座を企画したらどうかという提案があった。 男女共同参画の問題とからめた取組みを企画段階から地域住民と一緒につくるものにしていきたい。 |
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